ネットが空でも釣り続ける理由

シカゴのベランダで午前2時。スマホの光が小さな灯台のように輝いていた。『小舟釣り』の画面にはまた「1」か「2」——魚はいなくて、勝ちもせず。それでも私はもう一度タップした。

運を信じたわけじゃない。やめることが、自分に足りていないと認めるような気がしたからだ。

心理学者として、ゲームが人間の感情にどう影響するかを長年研究してきた。このゲームはただの釣りではない——希望そのものを再現している。

待ちの儀式

「賭け投入」を押すたびに静寂が訪れる。意思決定と結果の間に生まれる一呼吸——ここに意味がある。

母も毎月給料日後に銀行残高を見る前にろうそくを灯していた。不安な日々の中で、「コントロール」を感じたいという祈りだった。

私たちは魚を求めているのではない。アルゴリズムが心配してくれるような、一瞬でも『見られている』実感を求めているのだ。

偽りの選択肢

ゲームは言う。「あなたが選ぶ」と。数字を選んだり、やめるタイミングも自分で決められる。

だが本当は？「もう一回だけ」という言葉は自由ではなく、罠だ。

神経科学によると、「近接勝利」（ニアミス）は実際に勝ったときと同じ脳領域を活性化する（Dong & Potenza, 2012）。つまり、負けているのに気分はよくなる——それは意図的なエンゲージメントだ。

だからこそ倫理が問われる：感情的に脆弱な人間に対し、偽装されたコントロールで安心感を与える仕組みを作ることは許されるのか？

勝ちより大切なこと？

先週、30分で40ドル失った。貪欲さではなく……家からの連絡がないことに悲しみを感じていたからだ。「笑えない？」そうかもしれないけど、「現実」だった。

ゲームは何も変えなかったけど、その数分間だけ“意味のある”気分を与えてくれた。

あるときにはそれだけで十分かもしれない。プレイしたいという衝動は弱さじゃない——つながりたいという願いの形なのだ。

欲しいのは金や名声ではない。証明したいだけ：あなたにはまだ力がある——たとえボタン一つしか操作できないとしても。

心で遊ぶとは？

私は誰かが気楽に遊んでもらうことは否定しないし、私もかつてそうだったからこそ理解できる。しかし心理学的視点から見ると問うべきことがある：友人がこのゲームで苦しんでいるときに、「リスクがある」と伝えないのは正義だろうか？

多くのシステムは、“尊厳”という名のもとに虚偽なコントロールを与えながら私たちを傷つける——集中力も睡眠も心も消耗させながら。「楽しい」という名目で隠された痛みであることを忘れてはいけない。

楽しみを壊すつもりはないけれど……無自覚な引き寄せに気づかないまま進むことは許せない。

もし今、「ループから抜け出せない」と感じたら：手を離してほしい。
端末から離れて。
窓を開けて。
音に耳を傾けて。
あなたはすでに完璧なんだから。